目次
点数
・個人評価:9.6/10点
・オススメ度:9.0/10点
※個人評価の点数の目安
10.0~9.0:神作
8.9~7.5:良作
7.4~5.0:凡作
4.9~3.0:微妙作
2.9~0.0:駄作
概要
- 2023年8月10日より電撃文庫から出版されたニジガクの公式スピンオフ小説です。
- 著者は五十嵐 雄策氏、原作は矢立 肇氏、原案は公野 櫻子氏、イラストは火照 ちげ氏、本文イラストは相模氏が担当です。
- 「紅蓮の剣姫」とは、アニメ本編にも少し出ていた優木せつ菜(本作における主人公)が大好きなライトノベルのことです(要するに作中作)。
- 本作は「紅蓮の剣姫(作中作)」を題材としたミニフィルムを撮影するというお話です。いわゆる「異世界モノ」というものではありません。
- 本作の時系列はアニメ話数で言えば2期11話と2期13話の間だと思われます(そう思う理由は後述)。
良い点
日常パートと「紅蓮の剣姫」のストーリーが上手くリンクしており、更に日常パートではアニガサキの作風をちゃんと受け継いでいるためとても良い小説でした。
概要でも述べた通り、本作はいわゆる「異世界モノ」ではなく、あくまで「ニジガクの日常の中の話」という位置付けになっているのですが、その日常パートがちゃんとアニメの世界観を受け継いでいてとても読みやすくなっていました。
また、本作は「紅蓮の剣姫」のフィルム撮影をするという話なので、それによって「紅蓮の剣姫」の話も入ってくるのですが、そこがまた上手く日常パートと上手くリンクしていてこの本ならではの楽しさもちゃんとありました。
描写については、やはり小説故にエモ曲やエモシーンでは誤魔化せない文字だけの勝負になっている分、結構丁寧な印象でした。
1話はニジガクを知ってた人でもそうでない人でも関心を寄せそうだと感じたくらいに導入編としてはよく出来ていて、2~5話のユニット編(R3BIRTH→DiverDiva→A・ZU・NA→QU4RTZの順)も「紅蓮の剣姫」の話と絡めつつ話を展開していってて楽しめたし、6話とエピローグは今までの話がちゃんと繋がっていて良い締めだったと思えました。
元々アニガサキの話は丁寧かつ優しいものでしたが、それが文字だけでも印象強く表せていました。言うなれば脳内でアニメが流れてる感じ?
また、アニメ本編の話の回想もあったことで話に深みを持ってたのもまた良かったです。
こう聞くと「アニメ見なきゃわからんの?」となるかと思われますが、重要な部分はちゃんと説明されているので未見でもある程度は理解できるようにはなっています。
そして、アニメ本編以外にも「にじよん あにめーしょん」や楽曲とリンクする描写も入っていました(本編でいう小ネタに近いもの)。詳細はあえて伏せますが、にじよんについては2話のとある場面でそれが見れるとだけ言っておきます。
元々はアニメ内における作中作から始まった「紅蓮の剣姫」ですが、それが2022年のエイプリルフールにてつかれた噓である「主演:優木せつ菜で実写映画化決定!」というものを経て、今回の小説により噓から出た実に近しいモノとなる躍進を遂げました。
その傍らで、本作で描かれていたニジガクの日常もちゃんと今までのアニガサキの系譜を継いでいる丁寧かつ優しい物語になっていて、その上で「紅蓮の剣姫」という作品の存在感も主張されていたのではないかと思います。
※余談 時系列について
ここでちょっと本作の時系列のお話を。
本作は「ニジガクのスピンオフ小説」という位置付けですが、要所要所でアニメ本編に携わる描写があってアニメの時空と多かれ少なかれ関連性があるものだと思われます(というかそもそも話自体はアニメ準拠だけど)。
前述でも軽く触れましたが、本作は「2期11話と2期13話の間の話」である可能性が高いです。根拠は以下の通りです。
- せつ菜(菜々)の生徒会長の任期がまだ終わっていない(栞子に引き継ぐのは13話のライブ後)
- 11話の3年生3人の会話について触れられている
- ニジガクのファーストライブの準備についての言及がある(1stライブは11話にて果林が提案している)
とりあえずこのようなところでしょうか。(またなんかあれば追記予定)
ただ、12話を経ているかどうかは不明ではあります。以下理由
- ラブライブ(大会)に出ている(出ていた?)ハズのモブライブ達(東雲、藤黄など)が5話のQU4RTZ主催のプロモーションイベントに顔を出している(ライブはない模様)。ラブライブ予選前の息抜きなのか、あるいはラブライブがひと段落付いたので結果待ちで当分ヒマになったから来たのかは不明
- 歩夢の短期留学、侑のコンクールについて一切の言及がなかった。まだお互いに胸の内に秘めていたのか、既に胸の内を明かしたからなのかは不明
このようなところでしょうか。
真面目に考えるなら、もし仮に12話を経ていないのであればモブライブ達はラブライブ予選前なのに遊んでる場合なのかと思うし(とはいえ1stライブ前に今回の映画撮影をしてるニジガクも大概だけど)、侑と歩夢もそれぞれのやりたいことについてまだ明かせてないんじゃ作業に集中できんだろうしで12話を経ている可能性の方が高いでしょう。
まぁ、公式解答がないためこれは私の憶測の域を出ないので、参考程度に聞いてもらえればと思います。
※余談おわり
悪い点
今回の小説、ニジガクファンの方に是非とも読んで欲しいと思ったくらいに良いものだったのは間違いありませんが、折角のせつ菜主役のスピンオフなのに日常パートの半数近くがユニット編になっているというのは少々気になったところでしょうか。
ユニット編自体はちゃんと物語全体にも関わってくるところなので決して「ユニット編はいらない」とまでは言いませんが、にしてもA・ZU・NA編を除いてはせつ菜の影がやや薄くなっていた印象があります。
無論、なりふり構わず主人公を出しゃばらせても話もあまり面白くはならないでしょうし多少は主人公が物語に直接関わらない話があっても良いとは思いますが(現にアニガサキ本編でも一部EPでは侑が関わっていない)、それをナンバリングされてる話だけで見ても半分もやっているのはやや疑問に思えます。
とはいえ、序盤と終盤ではちゃんとせつ菜が主役だというのが伝わっていますし、せつ菜だけを目立たせるのは違うという意味でもユニット編をやったというのは分かりますが、やはりもう少しせつ菜が主人公だというのを見せても良かったのではと感じてしまうのが惜しいところでしょうか。
また、「Love U my friends」を便利なエモ製造機みたいに扱ってたところもややモヤったところでしょうか。
「Love U my friends」とは言うまでもなくニジガクの曲の一つのことですが、それが本作の終盤でも使われていました。
まぁ、友達にまつわる話をする時に流したい曲は何かと聞かれたら間違いなくこの曲が適任なので決してデタラメな選曲などではありませんが、アニメやにじよんで計2度も使ったネタをまた使うのは多少なりとも引っかかるところでしょうか。
読むのはアリ?ナシ?
非常に強くオススメ出来ます。
一見したらよくある異世界モノの小説のように見えて敬遠されそうですが、前述でも語った通り日常の中の話なので読みやすくはあるでしょう。
普段あまり小説は読まない私でも非常に分かりやすいと感じました。
まとめ
以上です。
小説を読むのは割と久々でしたが(最後に読んだのは多分リコリスリコイルのヤツ)、ニジガクが主役なのも相まってとても楽しく読めました。
下手な専門用語とか複雑な設定もあまりなく読みやすいので、ニジガクのことが元々大好きな方が楽しめるのはもちろん、ニジガクを知らない方でも入門書として楽しめるように作られているので手軽な布教本としても非常に優秀でしょう。
なお、著者の方は「紅蓮の剣姫」の世界観や設定、ストーリーなどをほぼ考えているとのことだったので、もし叶うのならば「紅蓮の剣姫」単体の小説も読んでみたいと思えました。
いつかは出るといいなぁ…
投稿日:2023/8/12